新潟日報LEADERS倶楽部島田慎二氏講演会
発足から13年目、過去最多121の企業・団体・教育機関が参加する新潟日報リーダーズ倶楽部は、7月10日に講演会を開催しました。新潟県出身で男子プロバスケットボールリーグ「B. LEAGUE(Bリーグ)」チェアマンの島田慎二氏が、約70人の参加者に向けて、スポーツによる価値創造やBリーグの目指す姿を熱く語りました。講演の様子を紹介します。
講演
B.LEAGUEの
軌跡と未来
公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ
代表理事CEO(チェアマン)
公益財団法人 日本バスケットボール協会 副会長
島田 慎二 氏
バスケとの出合いは 倒産寸前の千葉ジェッツ
私は現在53歳。15歳まで旧朝日村の田舎で育ちました。全国高校サッカー選手権を目指し、日大山形高等学校(山形市)に越境進学。サッカーに明け暮れた3年間でした。
東京で大学時代を送り、就職活動では50社に落ちました。ようやく就職したのは旅行会社。旅行業界に興味があったわけではなく、そこしか受からなかったのです。それでも仕事をやっていると面白くなる。25歳で仲間と法人向け海外旅行を扱う会社を、30歳の時に個人で海外出張専門の旅行を扱う会社を立ち上げました。会社は成長したのですが社員とはうまくいかず、状況を打破するためにいろいろな書籍を読みあさりました。会社は自己実現のためのものではなく社会の公器であること、そして経営理念の大切さに気付いたのは30代半ばでした。
その後会社は売却したのですが、株主として出資してくれていたのが当時bjリーグの千葉ジェッツのオーナーでした。彼に請われてアドバイザーとして経営に関わるようになり、クラブの倒産寸前の状況に直面します。選手たちは頑張っている。スタッフも寝ずに働いている。地元の応援もある。しかし存続は危機的。当時の経営陣から社長就任を打診され、再建を引き受けることになりました。
再建のため経営理念を掲げ トップクラスのチームをつくる
今の千葉ジェッツは4度の地区優勝、53勝7敗の最高勝率や最長連勝記録である24連勝、観客入場者数4年連続ナンバーワンといった記録を持つ、Bリーグトップクラスのチームです。富樫勇樹選手(新発田市出身)は2019年、バスケ界日本人初の1億円プレーヤーになりました。
しかし私がチームに関わり始めた11年には給料もまともに払えませんでした。チームは弱く観客は入らない。スポンサーはおらず銀行は融資してくれない。千葉にはプロ野球の千葉ロッテマリーンズ、サッカーJリーグの柏レイソル、ジェフユナイテッド市原・千葉など多様なトップチームがあり、千葉ジェッツの知名度は低かった。そんな中で社長に就任した私は「組織改革、ブランディング、マーケティング」の3点にフォーカスし、体制を整えていきました。
組織改革では、経営理念「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」を掲げます。ステークホルダー(利害関係者)みんなでチームを盛り上げ、サービスを創造し、感動を味わい、夢を見ることのできる運営会社を目指しました。チーム強化にも理念を策定し、目指すべきスタイルを明確に示しました。
千葉県には資金力のあるベンチャー企業が多い。大企業に向かうチャレンジャーとして巨大企業を倒す夢に共感してもらいながら2億円の資金を獲得。それがチーム強化や富樫選手獲得につながり、17年1月にはBリーグ天皇杯で初優勝することができました。
ウイルス禍の逆風の中で Bリーグチェアマンに就任
千葉ジェッツの会長になった1年目、Bリーグチェアマンのオファーがありました。新型ウイルス禍の真っただ中で、また大変な毎日が始まると思いましたが、千葉ジェッツでの経験を生かし、やるしかないだろうと引き受けました。
16年に開幕したBリーグ。現在ではNBAに次ぐ世界第2のバスケリーグに成長しました。23~24年シーズンでは北海道から沖縄まで41都道府県56クラブが参加しています。市民球団が多くビジネス意識、ベンチャー気質が強い経営者がいます。外部の企業や団体と積極的に連携し、女性の活躍も推進しています。
26年にはリーグ構造の大改革を実行します。「B・革新」。これは国内プロスポーツ全体の発展をけん引するキーワードです。現在の3部制をBリーグプレミア、Bリーグワン、Bリーグネクストに再編し、単年の競技成績による昇降格を廃止。トップカテゴリーのプレミア入会の基準は入場者数4000人以上、売上高12億円以上。成長の原動力となるアリーナも整備しなければなりません。
現在、箱もの投資が難しい中で八つのアリーナ計画が進んでいます。すでに完成している沖縄、群馬、佐賀では入場者数・チケット売り上げ共に2倍以上になりました。イベントが誘致され、地域への経済効果も大きい。アリーナは天候の影響を受けないため24時間365日の稼働が可能で、デジタルテクノロジーの活用も容易。災害などの非常時には避難所にもなります。新潟でのアリーナ建設にも期待しています。
中期経営計画を発表 改革の先に目指しているもの
Bリーグでは6月に中期経営計画(24~28年)を発表しました。26年からの大改革を機に3年間で一気に成長する計画です。そしてこのタイミングで2050年の未来を見据えたビジョン「感動立国」を打ち出しました。Bリーグは何をしたいのか、その明確な理念がないと社員を鼓舞し続けるのは難しい。そして日本の活力を生み出すために、バスケリーグとして何ができるのかを表明したいと考えたものです。
アリーナを通じて地域の皆さまとつながり、地元の誇りとして喜んでもらう。故郷を離れた若者も、応援するクラブがあるから帰ってくる。応援しがいがあるスポーツがあれば地方を元気にすることはできます。全国に展開する60クラブの熱量は国を動かすでしょう。
また、バスケ界は長く低迷してきましたが、たった10年でここまで盛り上がってきました。あきらめずに頑張れば何とかなるということ、今の閉塞感を打ち破ることにつながるということを、われわれの姿から若い人たちに感じてほしいというメッセージも込めています。
23~24年シーズン、B1、B2リーグの総入場者数は史上最多の約450万人になりました。中期経営計画では28~29年シーズンまでの目標として、総入場者数700万人を掲げます。事業規模は580億円から800億円に伸ばし、30年までにBリーグから5人のNBA選手を輩出したいと考えています。
25年後は今の子どもたちがメインの客層。未来ある子どもたちのために、今、大人が汗をかきましょう。今日お集まりの経営者の皆さんもぜひご協力をお願いします。
プロフィール
公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ
代表理事CEO(チェアマン)
公益財団法人 日本バスケットボール協会 副会長
島田 慎二(しまだ しんじ)氏
1970年、新潟県村上市(旧朝日村)生まれ。日本大学卒業後、93年(株)マップインターナショナル(現エイチアイエス)入社。95年に退職後、法人向け海外旅行を扱う(株)ウエストシップ設立。その後も海外出張専門の旅行を扱う会社やコンサルティング事業を展開する会社を設立。2012年、(株)ASPE(現:千葉ジェッツふなばし)代表取締役社長に就任。一般社団法人日本トップリーグ連携機構理事やBリーグ クラブ経営アドバイザーなどを経て、20年7月公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ) チェアマンに就任。